「ファールスィー・シーリーネ」(ペルシア語は甘い) 、という一節があります。これは、華麗な書体と優美な音を持ち合わせたペルシア語が、いかに世界を魅了しているかを端的に表したものです。
およそ半年間、イランのマシュハド・フェルドゥスィー大学に留学しました。マシュハドは、イスラーム教シーア派の聖地として数多くの巡礼者たちを迎える大きな街です。首都テヘランからは約900キロメートル離れており、日本だと東京・福岡間のような位置関係になっています。フェルドゥスィー大学は、その名の通り、イランの大詩人フェルドゥスィーにちなんで名づけられ、イランで三番目に設立された大学機関です。大学に併設されている語学学校に所属し、クラスメイトや寮の友人たちと互いにペルシア語の鍛練に励んできました。語学学校の先生方はとてもフレンドリーで、いつも親身になって質問に応じていただきました。
イラン人はお喋りが好きなので、語学学校のみならず至る処でペルシア語を使って会話することができます。タクシーの運転手、お店の主人、更にはバスを待っている間イラン人に道を聞かれることもしばしば…。ついつい物騒なイメージを抱いてしまいますが、一度飛び込んでしまえば、そこには活気ある街並みとおもてなしの精神に満ちた人々との出会いが待っています。この「甘い」ひとときに包まれた留学生活は心に深く刻まれ、一生忘れられないものとなっています。(矢野健太郎)
【写真】マシュハドの居合道教室にて |