「“私らしく”過ごした一年。」 高木 菜那(留学時3年生)
・Nørgårds Højskole(2019年8月~12月)
・Vestjyllands Højskole(2020年1月~6月)
海外にはほとんど行ったことがなかった私は大学三年の夏、デンマークに約一年間行くことを決めた。最初は勿論不安だらけだったが、あっという間の一年だった。
一つ目のNørgårds Højskoleでは、ダンスとアートをメイン科目として選択し、ほかにもカヤック&クライミング、ウクレレ、家具のリノベーションなど、身体や手を使った科目を選択した。
ダンスの授業では、“踊る”ということの幅広さ、楽しさを感じた。経験に関係なく皆で振りを作る、無音の中で相手の動きを感じて体を動かす、目をつむって感じるまま音楽に合わせて動くなど、「これも“踊る”ということなのか」と新しい発見ばかりだった。
寝食を共にしているので、授業時間以外にも、焚き火をしたり、プールに行ったり、散歩したり、一日の中で本当にいろんなことをして充実していた。最後には顔を見ればその日の体調が分かるくらい仲良くなった友達もできた。
2つ目のVestjyllands højskoleは、サステイナビリティに力を入れている学校で、ヴィーガンやベジタリアン、環境活動家の人が多くいた。日常の中でいかにプラスチックを多く使っていたか気づいたり、コンポストに野菜や食材の廃棄を入れて肥料を作れることを知った。自分の生活の中でいつも環境問題がこんなにも身近にあるんだというのを知った。
この学校は、キッチンの作る料理が本当においしかった。90%以上オーガニックの食材を使っていて、毎日キッチンのスタッフが食材を見てその日に考える、バラエティにとんだご飯を食べられるのが本当に幸せだった。また、ベジタリアンが多いため、常にベジタリアン用のご飯が置かれていて、私もそれを食べていたのだが、本当に美味しく、お肉なしでもこんなに多くのおいしい料理が作れるのだと知った。
しかし、三月上旬、新型コロナウイルスの影響でロックダウンが発表され、学校は閉鎖を余儀なくされた。そんな中でも、学校以外に行く場所のない生徒は、学校に残ってもよいという許可がでて、さらにキッチンの食材をすべて使うことができた。そこから、約10人での集団生活が始まった。最初は、緊張を解くために考えたゲームを全員でしたり、ミーティングをたくさんしてお互いを知っていった。
交代制で夕食を作り、毎日一緒に食べ、うれしいことも悩みもたくさん話した。そうやって毎日一緒にいる中で、私たちはだんだん小さい家族のようになっていった。
四月からは、学校の広大なガーデンで私たちはボランティアとして、庭の手入れ、畑仕事をするようになった。農業などやったことがなかったので、最初は、土をかえすことの意味もよく分からず、ただ、草を抜いたり、種をまいていた。
それから少しずつ暖かくなり、植えた種が目を出して大きくなっていくのが分かると、どんどん楽しさが分かってきて、農業が楽しいと思い始めた自分がいた。また、ケガしたときにはこの草の汁を塗るといい、おなかの調子が悪いときにはこのハーブなど、生活の知恵がついてきた。
6月になると、自分たちが植え、手入れした食材が実って食べごろになった。ご飯を作る前にガーデンに行って食材を収穫し、そのまま料理して食べる幸せはこの上なかった。
当初は自分がデンマークで農業をしているなんて想像もしていなかったが、とてもいい経験になった。
私がホイスコーレで得たものは、目に見える成果や技術より、目に見えない人の温かさとか生活の中にある何気ない瞬間の尊さといったものが多い。
そしてとにかく“対話”する時間が多い。とにかく何でも生徒同士で話し合って生活を作っていく。学校が決めたルールや規則はほとんどない。だからこそお互いの考えを尊重しあった。そして、本当に人は一人一人全然違う考えや価値観を持っていることを何度も感じた。
朝起きたばかりのぼさぼさの頭で「よく眠れた? こんな夢みた」などと友達と話すような経験はなかなかない。
もちろん言葉の壁、集団生活の中で生まれる問題も多くあったけれど、私らしく、瞬間瞬間を生きられた一年だった。