「2つのフォルケ体験記」           延原 佳穂(留学時3年生)

【留学先学校名】
・Askov Højskole(2019年8月~12月)
・Uldum Højskole(2020年1月~2月)

 

 私は約半年のデンマーク留学で2校のフォルケホイスコーレに行きました。1校目はAskov Højskoleという学校でした。Efterskoleという日本で言う高校も同じ敷地内にありましたが、フォルケの生徒は20人ほどでこじんまりしていました。そのほとんどがデンマーク人ですが外国人向けのコースもあり、私はそこに所属していました。コースに分かれているとはいえ午前中の授業がコース別なだけで、午後からの授業やアクティビティは全員一緒だったので常にデンマーク人と一緒にいるという生活でした。フォルケでは基本全てデンマーク語なので、初めは先生が出す指示も聞き取れず全て友人に聞いていました。慣れるまでは大変でしたが次第に先生の話が理解できるようになっていくのを感じ、嬉しかったのを覚えています。このフォルケには少人数だからこその利点がたくさんありました。
 勉強面では、自分が成長できる場が多いことです。デンマーク語の授業ではもちろん、みんなが集まる場でのプレゼンテーションを何度もやらせてもらいました。かなり度胸のいることでしたが、大勢に自分のデンマーク語を理解してもらえたという経験は大きな自信になりました。イベントでも一人ひとりに役割があるため主体的になります。普段あまり前に出ない私には慣れないことでしたが、おかげで積極的に参加していく楽しさを知りました。そして何よりも友人らと濃密な時間を過ごせるという利点があります。彼らと過ごす中で私は自分が“日本人”ではなく、1人の友人として扱ってもらえていると感じていました。最後の日には全員で同じ部屋にマットレスを敷いて一緒に寝たほど全員で仲良くなりました。友人に恵まれ、本当に濃い時間を過ごすことができました。



 2校目はUldum Højskoleといって、1校目とは正反対の非常に生徒数の多い学校でした。この学校の特徴は多種多様な授業から自分の好きなクラスを選択できる点です。私もここで沢山の初めてのことに挑戦しました。Uldum Højskoleには2か月ほどしか滞在できませんでしたが、苦手だった絵を描くことが楽しくなったり、編み物ができるようになったり、コーラスに参加したりと、日本ではできなかった・やらなかった沢山のことを体験できました。これは先生も生徒も多い大きな学校だからこその利点だと思います。フォルケ留学はデンマーク語を学びたい私たちには最高の環境です。生活のすべてがデンマーク語で溢れています。だからこそ大変であり充実しています。

 私はデンマーク留学で大きく3つ得たことがありました。1つは現地の言葉でコミュニケーションをとることの意義です。デンマークの人々は英語が堪能で、英語で会話することはお手の物です。しかし他言語では伝えきれないデンマーク語特有のニュアンスというのは沢山あります。近年日本でも普及しつつある“hygge”というデンマーク語は、日本語では「家族や友人らとゆったりくつろぐその温かな時間」などと表すことができますが、日本語での説明を聞いた時とデンマーク語で“hygge”と聞いたときとでは湧き上がる感情は同じものにはなり得ません。デンマーク人の友人が「自分の気持ちを話すときは英語では難しい」と言っていたことが印象に残っています。日本語と同じようにデンマーク語にもデンマーク語だからこそ伝えられる独特のニュアンスがあります。彼らと感情を共有し、「人と人」として深い付き合いができたことはかけがえのない経験です。

 2つ目は自分の目で確かめることの重要さです。私は留学前に持っていたデンマークのイメージをいい意味でも悪い意味でも崩されました。思っている以上に世界には色んな人がいていろんな考え方があると知るだけでも大きな収穫でした。

 3つ目は自分を見つめなおす機会です。留学は自分自身を見つめる絶好の機会だと私は考えます。日常からかけ離れた状況に身を置くからこそ、自分を客観的に見ることができます。日々時間に追われて過ごしているとなかなかできないことです。

 留学することがそう珍しくない時代ですが、留学に行くことは私にとって非常に大きな挑戦でした。そして多くの助けがあったからできたことです。このような素晴らしい経験ができたことに感謝するとともに、この体験談を読んだ方が一歩踏み出すお力添えができればと思います。