留学体験談  「物怖じせずに、飛び込め自分!」  山西 永莉(留学時3年生)


  

 
   

【留学先学校名】
・Rønde Højskole (2010年8月~2010年12月)
・Grundtvigs Højskole(2011年1月~2011年6月)


 私がデンマークへ留学に旅立ったのは、2010年8月のことでした。留学を決意した理由は主に3つあります。


1.日常生活において、デンマーク語を実際に使用する機会がないため。
2.これまでの人生ずっと実家暮らしで、十分に自立出来ていないと感じたため。
3.世界中の多種多様な価値観に触れ合い、自分を更に成長させたいと思ったため。


 このような想いを胸に、私はデンマークにある2つのフォルケホイスコーレ(国民高等学校)に約半年間ずつ滞在しました。


 1校目は、Rønde Højskoleという、デンマーク第2の都市オーフースから20分ほど離れた場所に位置する学校です。2校目は、Grundtvigs Højskoleという、デンマークの首都コペンハーゲンから北へ1時間ほど離れた場所に位置する学校です。どちらも日本人学生がおらず、かつ、デンマーク人や留学生の多く集まる人気の学校でした。


 さて、今までデンマーク語を猛勉強してきた甲斐あって、初日から皆とすぐに打ち解ける事ができ、何不自由なく生活を…とはいきません。毎日が、「驚き・戸惑い・挑戦」の連続でした。朝会では必ず歌を歌い、授業では皆ノートパソコンを持参し、おやつの時間にはニンジンを丸ごとボリボリ。映画を見る授業では、一度自分の部屋(寮)へ戻り、枕や布団、お菓子やコーヒーを持ち寄って、寝そべって鑑賞することも珍しくありません。毎週パーティーも数多く開催され、ビール片手に騒いで躍ります。街中へと繰り出せば、アイスを食べている人や自転車に乗っている人をやたらと見かけます。缶や瓶のリサイクルマシーンや、古着屋、アンティークショップ等、エコへの取り組みが其処彼処に見受けられます。


 このような異国の地で、私は当初、何事に対しても受け身姿勢でした。間違ったデンマーク語を使う事を恐れ、いつも無難な返答ばかりしていました。皆、日本に興味津々で、初めは近寄って来てくれるものの、いかんせん距離を作ってしまっていたのは私自身でした。


 とある日、フィヨルド登山の開催に向けて、資料(デンマーク語表記)が配布されました。私は内容が十分に理解できず、最初は友人達に質問していたのですが、「質問しすぎるとうっとうしがられるかも」と、途中で質問をやめてしまいました。スケジュール確認の曖昧なまま迎えたフィヨルド登山では、私は事前確認の甘さから服装や荷物を間違え、挙句の果てには過呼吸となって周囲に迷惑をかけてしまいました。「一体私は何の為にデンマークに来たのだろう。何一つ成長してないじゃないか…」と痛感した出来事でした。


 それからというもの、私は姿勢を改め、「明るく・前向きに・突き進むのみ!」をモットーに、様々なことに挑戦しました。演劇、24時間マラソン、週末のサイクリング等、皆と多くの時間を過ごし、盛んに意見を交わしました。語彙力も発音も拙いものながら、「はっきり自分の気持ちを述べること」だけは妥協しませんでした。恥じることなく積極的に輪の中へ入り、周りと協調しながらも、挫けずに明るく笑顔で意思を伝えたことで、仲間と楽しい一時を過ごす事が出来ました。

 また、デンマーク人や留学生達の「日本に対する関心の高さ」を常日頃感じていた私は、日本文化の発信にも励みました。というのも、彼らの持つ日本のイメージは古かったり、間違っていることが多かったのです。「日本人って、ごはんしか食べないの?」「毎朝、腹切りするって本当?」「サムライに会える?」等、もうハチャメチャでした。そこで私は、学校中の生徒200名に焼き鳥を振る舞ったり、近所のおじいさんに日本語を教えたり、月に1度日本文化に関するプレゼンテーションを行ったり、幼稚園を訪問して折り紙を教えたりしました。こうして、お互いしっかりと相互理解を深めたことで、ますます絆は強くなっていきました。


 フォルケホイスコーレを卒業し日本へ帰国するまでの期間中も、たくさんの友人達が、自宅に泊めてくれたり、サプライズパーティーを開いてくれたりと、ここでは書ききれないような多くの素晴らしい体験をしました。この約1年間、彼らが側で支えてくれたおかげで、ホームシックになった事はありません。唯一恋しかった事といえば「お風呂にザバーッと浸かること」です(笑)。


 デンマーク語専攻の私がこのようなことを言うのもおかしな話ではありますが、デンマーク語が完璧に話せるかどうかは重要ではないと思います。大切なのは、「ありのままの自分に自信を持って、明るく前向きにドンと突き進んでいくこと」です。物怖じしてばかりでは、何も得られません。このことに気付くことが出来たからこそ、私は充実した留学生活を送ることが出来たのだと思います。そして、この留学を通して得たかけがえのない友人達は、距離的には遠いけれども、いつも気持ちは側にある、私の一生のソウルメイツです。