留学体験談 A.T(留学時3年生)
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【留学先学校名】
・ International People‘s College ( 2012年 8月~ 2012年 12月)
・Den Skandinaviske Designhøjskole ( 2013年 1月~ 2013年 7月)
2012年8月14日デンマークのカストラップ空港に友人とたどり着いた。デンマークには10年ほど前に一度旅行で来たことがあったが記憶も薄く、一人暮らしをしたことがなく言語にも自信がない私にとっては初めての長期留学は不安でしかなかった。コペンハーゲン中央駅でセブンイレブンを見つけて友達とはしゃいだ。
少し気持ちが安らいだが、それから半年後セブンイレブンが日本のメーカーではなくアメリカのメーカーであるということを友人のノルウェー人との会話で知る。
1校目はHensingørにあるインターナショナルな学校である。生徒は80人ほどいて、私の通った秋タームの4か月間は前期・後期に分かれている。ほとんどの人は丸4か月間在籍する。公用語は英語。日本人が一番多く十数人いた。続いてドイツ人、チェコ人、ハンガリー人が多かった。人種は様々。生徒の年齢は他のホイスコーレに比べ比較的高く、30代が結構いた。授業は選択制。
校長はディズニーのアラジンの声を務めた元アイドルであり、人望が厚い人であった。
彼は朝礼の授業にはいつも彼の好きなビートルズを始めとする曲をピアノで弾き語りして生徒に一緒に歌わせた。その時間はいつも心が温かくなり、世界が一つになっている感覚になった。
私が思うに、この学校の目玉はカルチュアルイブニングと豪華なブランチである。
カルチュアルイブニングは2週間に一回あるパーティーで、毎回国や地域ごとにグループに分けられた人達が他の生徒に自分達の劇、歌やダンス、プレゼンでアピールするのである。最後には国の名物料理をふるまう。
このアピールは楽しいものだけではない。例えば、私はある南サハラ出身の女性に出会った。彼女は始めて会った時からきさくな人で私達はすぐ仲良くなった。強気だがそれが逆にユーモラスで、心優しく、いつも笑っているような人間だ。だが、彼女には辛い過去があった。彼女は南サハラ出身だが、実際は母国を訪れた事はない。南サハラはモロッコに迫害されており、彼女はスペインの難民キャンプで育った。貧しい生活を送ったようだ。しかし、私達外部の人間でパキスタン問題は知っていてもこの南サハラの問題を知る者は少ない。モロッコ政府が迫害の報道を抑圧しているからである。ある南サハラの群集が抵抗したところ、村ごと全焼されたらしいと彼女は泣きながら語っていた。この学校で出会った人で悩みを抱えている人は彼女だけではない。チベット人、パキスタン人、ミャンマー人…。彼らは政治的、家庭的な問題に苦しみながら、それでも学校で楽しそうに過ごしていた。私はデンマークで世界を覗いた気がして、それはほんのごく一部であり、世界に対してもっと知りたいと思った。
二校目の学校はデザイン学校である。がらりと雰囲気が変わって生徒がほぼ北欧人の学校である。そのほとんどがデンマーク人なのだが、私が行った秋タームではノルウェー人が4割もいた。建築コース、グラフィックデザインコース、ファッション&テキスタイルコースがあり、私はファッションを選んだ。デザイン学校なだけあって、インテリアがおしゃれな学校である。授業は大体専門の授業で決められているが、選択授業をとる週もある。入学当初は全校生全員絵をたくさん描いた。一日中描き続ける日もあった。ヌードモデルも何回か学校にきた。
専門のクラスでは毎週テーマがあり、ゲストの先生がきた。最後には自分でテーマ、製作の過程すべてを決め発表会やファッションショーを行う。私が一番好きだった授業はオランダからきたファッションブランドオーナーであるゲストティーチャーによるもので、自分を見つめなおす授業だった。まず自分をお題にしたマインドマップをつくり、コラージュを作り、それから人形、最後に服を作った。先生はとても奇抜な恰好をしていてコメントが少々辛口であったが、カリスマ性がありとても魅力的な人だった。
ここの学校では、他の多くのホイスコーレのように一か月に一回寮生が企画するパーティーがあった。テーマは、80年代、ロック&上流階級、ファンタジー、死後の世界とどれも楽しいものであった。寮は4つあり、担当の寮がテーマだけではなく、パーティー会場の飾りつけやDJ、バーの運営を行う。テーマに沿ったドレスコードが設けられるのだが、テーマの発表もぎりぎり、学校も田舎でろくに買い物もいけないので、必死でコスチュームを手作りしている学生も少なくなかった。しかし、さすがデザイン学生。コスチュームのクオリティーはかなり高かった。
留学期間10か月弱、本当に貴重な体験をしたと思う。日本で生活しているだけでは気付きにくい世界、考え方を知った。
この経験を過去のものとして捉えるのではなく、未来につなげていきたいと思う。