ベトナム語専攻
専攻について
ベトナムと聞いて「ベトナム戦争」「枯葉剤」「難民」とイメージされていたのも今は昔、近年のベトナムは東南アジア諸国の中でも目覚ましい発展を遂げ、今では美しいファッション、ノスタルジックな建築物や伝統文化、中仏融合の独特の食文化によりアジア有数の観光地として我々を楽しませてくれるだけでなく、昔ながらの勤勉な国民性、手先の器用さ、常に新しい知識を取り入れようとする柔軟性で、日本の産業を支える良きパートナーとしての役割を担ってくれる国となっています。
ベトナムは最近になって注目を集めていると思われがちですが、実は日本とのつながりは非常に古く、その歴史は遣唐使の時代までさかのぼります。皆さんも「阿部仲麻呂」という遣唐留学生の名前は歴史の教科書でも見かけたことがあるでしょう。朱印船貿易、海のシルクロード...ベトナムと日本との繋がりは決して一過性のブームなどではなく、古より流れる川のように絶え間なく続いてきているのです。
ベトナム語は長きにわたる中国の支配の影響により漢語由来の言葉が文化語彙の多くの部分を占め、日本語に馴染みのある響きを聞くことができるでしょう。また、6つの声調による音の高低で、ネイティブの発音はまるで歌を歌っているかのように聞こえることでしょう。更に17世紀にキリスト教宣教師が使い始めたローマ字が、紆余曲折を経て今も使われています。視覚的、聴覚的にベトナム語は日本人にとっては親しみやすい言語であると言えます。
教育・カリキュラム
ベトナム語の習得で要となるのは、何といっても「発音」です。日本語でわずか5種しかない母音もベトナム語では単母音だけで11種、これに3種の二重母音、1種の介母音が加わります。また、19の子音が学習者を苦しめます。ここに6つの声調が加わるのですから、学習開始当初が最も苦しい時期かも知れません。しかしベトナム語専攻では、この「発音」に充分な時間を取り、徹底して何度も繰り返し練習をしていきます。初年度は発音の完全習得と基本的な文法事項を身に付け、2年次には「話す、聞く、書く、読む」の4能力の発展を目指し、前期終了時には語彙力、読解力、文法力の基礎が定着している状態になる内容となっています。そして、いよいよ後期(3・4年次)には各自の興味のある分野について、ベトナム語で卒業論文を作成することとなります。ベトナム語専攻には常勤4名(日本人2名、ベトナム人2名)、非常勤2名の教員がおり、言語、文化、文学、社会等の各種専門分野の指導に当たります。また、多くの学生が3・4年次にベトナムの大学に留学し、言葉の習得だけではなく卒業論文のテーマに見合った調査を行います。
学生生活
ベトナム語専攻では国内外を問わず、積極的にベトナム・ベトナム人と交流することを勧めています。大学にはベトナムからの留学生も多く、同じ授業を履修することもありますので、交流の機会に恵まれています。また、殆どの学生が在学中にベトナムへの旅行や留学を経験します。その中には在ベトナムの日本大使館・領事館で派遣員として働く者もいます。帰国後はベトナムルーツの子供達に母語(ベトナム語)・日本語を教えるボランティア活動をする者、ベトナムからの技術研修生のための通訳・翻訳のアルバイトをする者もいます。実際のベトナムに触れることで、ベトナムの社会・文化を知るだけでなく、彼らの価値観、意識を更に身近に感じ取ることができ、卒業後の進むべき方向への指針にも繋がります。
卒業後の進路
ベトナム語専攻は創立してやっと37年になりますが、既に多くの卒業生がベトナムに関わる様々な分野の第一線で活躍しています。特に近年はベトナムに進出する日本企業が多く、その開拓者としての役割を果たす卒業生も多くいます。もちろん、ベトナムに直接関わる仕事に就く卒業生ばかりという訳ではありません。しかし、そういった卒業生たちも折にふれてベトナムへ旅行したり、厳しいベトナム語学習が恋しくなるのか更なるブラッシュアップを図るためベトナム語学習を再開したりと、いつもどこかでベトナムとの繋がりを保っています。今後も卒業生の活躍の場が広がり、日本とベトナムの交流の懸け橋になってくれるものと期待しています。
教員紹介
- 清水 政明 教授 (歴史言語学、文字論)
- Phan Thi My Loan 准教授 (ベトナム語教育、日本語教育)
- 近藤 美佳 講師 (母語保持・バイリンガル教育)
- グエン ティ ゴック トー 特任教員